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レジデント型卒後教育プログラム『金沢大学薬剤師スタンダード:KUPS』

少子高齢化が進む日本では、全ての世代の人々が安心できて持続可能な医療体制とするために病院完結型から地域完結型医療への転換が必要とされる。そのため、病院は高度急性期、急性期、回復期、慢性期など一層の機能分化が進められている。薬剤部としても機能の異なる病院間や地域薬局等との連携と協働を強化した地域包括ケアシステムの中でのロールモデルを構築する必要がある。

金沢大学附属病院薬剤部は、薬剤部規程第3条で患者の診療等に必要な医薬品及び治験薬の調剤、製剤及び情報等の収集管理並びに服薬指導等の業務を行い、併せて、臨床薬理学及び医療薬学の教育(研修を含む)及び研究を行うこととしている。つまり、本院の薬剤部は、診療に加え、教育・研究も職務として行うことを特徴とする薬剤部である。

本院薬剤部は 2017 年に創基 150 年を迎え、課題解決能力に秀でた学位取得者と大学院生、高度な専門知識と技能をもちリーダーシップを発揮する志をもつメンバーで構成する「薬剤部ビジョンリーダーチーム(V チーム)」を組織し、これからのあるべき医療体制下での本院薬剤部の将来ビジョンと薬剤師人材の基準「金沢大学薬剤師スタンダード(KUPS)」を策定し、新たな人材育成を開始した。「金沢大学薬剤師スタンダード(KUPS)」は、薬剤師の幅広い活動領域においてバランスが取れて優れている薬剤師の基準で自他共に県内外からも高い評価を受け渇望される優れた薬剤師ブランドとなるものである。

KUPS 人材育成システムは 5 年間の任期付き常勤職員(KUPS 薬剤師)としての育成プログラムで、本院薬剤部の将来ビジョンと各個人のキャリアプランと人生設計を踏まえつつ、各個人に秘められた可能性を最大限に引き出すことを目的としている。医師の卒後初期研修にあたる期間(1~2 年目)は中央部門を中心に基本的な技術を修得する。1 年目の第2四半期から病棟にも出向き、病棟に配置された薬剤師のサポーターとして病棟活動を始める。さらに半年ごとに内科系・外科系病棟、外来化学療法室、先端医療開発センターをローテーションし、最初の 2 年間で基本的な業務を適切に行えるレベルになることを目指す。さらに、後期研修にあたる期間(3~5 年目)は主担当として病棟や外来化学療法室の活動に従事する。

KUPS 薬剤師は、診療、教育、研究、専門資格等、社会貢献、コンプライアンスの 6 つの領域について、スプレッドシートを用いてその状況を把握し、メンターや上司とで面談を重ね、ライフワークバランスを確認し、希望に応じて専門薬剤師、認定薬剤師、学位取得等の支援を受けるとともに、公私に渡る悩みの解決を図りつつ自己実現を目指す。また、機能の異なる施設間(中小病院、地域の保険薬局、PMDA、厚労省、他大学等)との人事交流にも参加することで、病院機能の異なる各施設の状況を熟知し、互いの溝を埋め全体を俯瞰することができる人材となる。

本人材育成プログラムは、宝町に研究室を置く薬学系臨床教員との密な連携のもと、金沢大学医薬保健学域薬学類教育の 3 つのポリシーに対応した薬学 6 年制教育の新カリキュラムによる卒前教育とも接続するよう、2025 年の医療体制を見据えた薬局病院統合型の実務実習プログラムとも呼応している。

本院薬剤部には、幅広い領域にわたって延べ約 70 名の指導薬剤師、専門薬剤師、認定薬剤師の認定資格者が所属し、同僚や後輩を育てるノウハウも蓄積している。この素晴らしい人的、知的財産を生かして、地域の各施設で必要としている資格や人材を、おおむね 5 年間で習得し、再び各施設で活躍してもらいたい。

KUPS修了者の声

堀 祐貴「KUPSでの5年間を振り返って」

当院に入職して初めの2年間は調剤室に所属しながら、病棟、外来化学療法室、手術室、TDM室での研修を行いました。各部署での研修を受けることで、自分が調剤した薬がどんな風に実際に使われているかを早期に経験できました。また病棟薬剤師のすぐそばで業務を行うことで、病棟薬剤師の役割を認識するとともに、必要とされる知識の膨大さや多職種との連携の必要性を知ることができました。またがん専門薬剤師という自分の薬剤師としての目標を見つけることができました。

3年目からは病棟担当となり、皮膚科と腫瘍内科を担当しました。多種多様な病棟業務に追われる日々が続きましたが、先輩方のサポートもあり、徐々に慣れていくことができました。担当となって半年ほどたってからは、化学療法をより安全に遂行するために医師に処方提案をしたり、看護師からの質問に自信をもって回答することができるようになったりと、少しずつ自身の成長を実感することができました。

5年目では中小病院での研修を行いました。大学病院で培った化学療法の知識を中小病院でも活かすことができ、自信がつきました。また大学病院とは全く違う環境を経験することができたことで、自分の視野を広がったように思います。

振り返ればあっという間でしたが、この5年間で多くの患者さんの薬物療法に関わることができたり、臨床研究を行い学会で発表することができたりと、とても充実した日々でした。目標であったがん専門薬剤師の申請基準を満たすことができたこともよかったです。

今後も薬剤師として研鑽を積みながら、日々成長していきたいと思います。